「ひなた、わたしのこと嫌いだったの」
ぴくりと彼女の肩が跳ねる。ちかちゃんはその反応を確かめてからゆっくりと話し続けた。
「ごめんね気がつかなくて」
(ちかちゃんが謝ることなんてなにもないだろ)
オレは口を挟みたい気持ちをグッと抑える。
ちかちゃんはそのまま、顔を上げない相手に対してこんこんと語りかけた。
「わたしに勝ちたくてこんなことするなら、もう全部、わたしの負けでいいから。――でもこれだけは聞かせて。ひなたは先輩のこと、ほんとうはどう思ってる? 佐藤くんが言ったようにわたしの好きな人って理由だけで選んだの?」
その質問に返事はない。
ちかちゃんは深く息を吸い込んで、また口を開いた。
「わたしはね、先輩がひなたを選んだのは、ひなたの努力が報われたからだと思ってる。ひなたは変わった。わたしにくっついてた頃のひなたよりもいまのひなたの方が断然いい。それはひなたががんばったからだよね。努力したからだよね。先輩もそんなひなたを好きになったんじゃないかな。だからたとえひなたが本心では先輩のこと好きじゃないんだとしても……先輩を裏切るようなことはしないでほしい」


