ガツッと彼女がオレのふところに潜り込み、胸ぐらを掴み上げる。その形相は手負いの獣のようだった。
「消えるのはあんたの方。千花ちゃんはあんたなんか選ばない! 目ざわりなの!」
オレは彼女の肘を掴んで抵抗する。
「それで? まさかほんとうにちかちゃんに勝った気でいるのか? ちかちゃんは上とか下とか考えてない。ましてや恋愛の勝ち負けなんて、バカバカしい! 友達として最低だ。ちかちゃんに勝ちたい? あいにく人間として全部負けてるよ!」
「うるさい……うるさい!!」
「お前なんかが二度とちかちゃんの友達を語るな!!」
「あんたにわたしたちのなにが分かるっていうの!?」
そんな終わりのない言い争いを止めたのは、いま一番この場にふさわしくない声だった。
「二人とも! 待ってってば!!」


