○姫百合学院・正門前(朝)
 姫百合学院の校舎を朝日が照らす。 

テロップ「それから時間が経ち……」

 綾乃、制服姿で正門をくぐる。正門をくぐり終えた綾乃、校舎を見上げる。

綾乃M「ここが姫百合学院か……7階建てだっけ? まるで白いお城みたい……」

○姫百合学院・職員室(朝)
 綾乃、職員室で担任教師の桜井えり(27)から説明を受ける。綾乃、手元に姫百合学院の白いパンフレットを持っている。

えり「村井綾乃さん。今日から姫百合学院の一員として頑張ってくださいね」
綾乃「はい。ありがとうございます」
綾乃M「桜井先生美人だなあ、スタイルもすごいし……」
えり「学校についてはそちらのパンフレットに書いてある通りになります。教科書は昨日届きましたか?」
綾乃「はい。無事届きました」
えり「それならよかったです」

 えり、にこやかに綾乃へ微笑みかける。綾乃、その微笑みを見てぽけーーっと変顔をしている。

男性教師A「おい、キングが来たぞ!」

男性教師A、慌てて職員室へと駆け込む。教師職員室にいる教師達がざわつく。綾乃、首をかしげる。

綾乃M「キングって誰だろう」

 綾乃、不思議そうな表情を浮かべる。えり、その綾乃を見て眉を八の字にしてくすりと笑う。

えり「キングが誰か知りたいのですか?」
綾乃「えっあっ……はい」
えり「じゃあ教えますね。キングはうちの姫百合学院の生徒会長で文字通りキングの存在です」

 黒いシルエットの怜王が男子生徒や女子生徒をはべらせているコマ。

綾乃M「王様みたいな人がいるんだ」
えり「そして月に1度、キングの寵愛を受ける女子生徒が決まるのです」
綾乃「えっ」
綾乃M「えっ、寵愛? それって大奥とかハレムみたいな事?」
綾乃「あの……それってもしかして、大奥みたいな事ですか?」

 えり、にこりと目を細めて笑う。

えり「その通りです。仕組みは大奥よりも中国の後宮の方が近いかもしれませんね」
綾乃「そ、そうですか……」
えり「はい。まずは校内の女子生徒がキングに選ばれるには選抜入りする必要があります。勿論これもキングのお眼鏡にかなった子だけが選ばれます」
綾乃「ふむふむ、なるほど」
えり「キングと面談し見事選抜入りすると、ランクが与えられます。ランクはイロハ順に分けられていまして最下級がヲ級、最上級がイ級。そしてその上の最高位がプリンセス……と呼ばれるランクになります」
綾乃「そうなんですか……」
えり「イ級の定員は2人。それ以下からヌ級まではそれぞれ4名が店員となります。ヌ級ル級ヲ級は定員がありません。選抜入りすれば自動的にそのヌ級ル級ヲ級からスタートになります」
綾乃「あの……もしかして」
綾乃M「低ランク程扱いが悪かったりとか……いじめられたりとか……無いよね?」

 綾乃、眉をひそめる。

えり「なんでしょうか?」
綾乃「低ランクだとやっぱり……扱いとか……」
えり「その辺は選抜外の子よりかは優遇されていますのでご安心を」
綾乃M「やっぱり選抜に入らなきゃダメなのか」
えり「高ランクになるにつれてオプションとかあるみたいです。そのあたり詳しい事は生徒会に聞いてみてください。私からあまり説明できなくて申し訳ないです」
綾乃「あっいやいや! 大丈夫です。あと……いじめとかあったりするんですか?」
えり「そこは無いと思いますけどねえ。キングもそういうのはお好きではありませんから」
綾乃M「よ、良かった」 

 若い女性教師、綾乃とえりの会話を遮るように職員室のドアを勢い良く開ける。

若い女性教師「村井綾乃さんいますか?!」

 綾乃、名前を呼ばれきょとんとしながら右手を挙げる。

綾乃「はい、ここに……いますけど」
若い女性教師「すぐに生徒会室へ来てください。キングがお呼びです!」
綾乃「えっ?!」
若い女性教師「はやく来てください! 私がお連れします!」
綾乃「えっええっ?!」
綾乃M「急に行けって言われても……!」

〇姫百合学院生徒会室(朝)
 綾乃、緊張の面持ちで生徒会室のドアを開ける。

綾乃「失礼しまーーす、村井です……」
怜王「待ってたよ」
綾乃「えっ」

 怜王、部屋の奥にある茶色い玉座に足を組んで座っている。その左右にイケメンの男子生徒を侍らせている。

綾乃M「ま、待って待って……! あの子、こないだの……!」

 フラッシュバック
 綾乃からサンドイッチを受け取った怜王の姿。

綾乃「あ、あの……えっと」

 綾乃、身体を震わせ動揺する。怜王、玉座から立ち上がり、綾乃に近寄る。

怜王「こないだはどうもありがとう。とても助かったよ」
綾乃「ああ、はい……どうも。お腹空いてたのが満たされたら……良かったです」
怜王「勿論お腹いっぱいになったよ。あのサンドイッチすごく美味しかったし。ねえ、結論から言わせてもらうと君……俺のプリンセスにならない?」
綾乃「え?」
綾乃M「え、プリンセスは一番高いランク……この私が、いきなり?!」