怜士さんは話しながら、わたしの寝るベッドに腰掛ける。
ギシリとベッドが揺れて、わたしは怜士さんを見上げた。
ほんとに、まったくさっきのこと気にして無さそう。

こんなに夢みたいな体験をさせて貰って、ずっと一緒に居ることができて、わたしはどんどん好きになってしまっているのに、彼からしたら日常なのかも。

全然意識されていない。

切なくなってしまい、眉毛をハの字に垂らすと、「ん?」と頬を撫でられた。

まるで、甘えてきたペット軽く構うように。

「凛? 疲れちゃった?」

どうせ期間限定の夢なのだから、思い切り甘えてしまえ。

今だけだ。
この旅が終わったら、雇用主と従業員としてこんな感情は忘れてしっかり働くから、今だけ、この人はわたしのものだって思わせて。

その手を両手で包みひっぱると、枕にしてやる。ぴとっと頬をについた手のひらは、暖かくて気持ち良かった。

こくりと、怜士さんの喉仏が動いた。

「凛……君は、本当に可愛くて堪らないな」

微笑んだと思うと、熱の籠もったセリフと共に顔が近づいて、あっと言う間に唇を奪われる。

「怜……んんっ?!」

さっきの触れるだけのキスとは違い、情熱的なものだった。
わたしは手足をバタバタとさせるが、怜士さんはものともしない。

すぐに酸素が足りなくなり喘ぐように顔を逸らすが、追いかけてきた唇にまた塞がれてしまう。

何度か角度を変えて繰り返していると、いつの間にか怜士さんの体が覆い被さっていて、重みでベッドに沈んだ。

怜士さんは指を絡めたわたしの手をベッドに縫い付けた。

極上の男に見下ろされる。
その顔は獣のように飢えていて、とても欲情的だ。

「好きだよ……俺のものにしてしまいたいんだけど、いい?」

また、夢を見ているのかと思った。
意識が朦朧として、幸せな幻聴を聞いたのかとも考えた。

怜士さんが、わたしを好き? そんな夢物語が現実にあるはずがない。

「凛は? 俺をどう思う」

鼻先を擦りながら、返事を促す。

返事を待つ間も、怜士さんの唇は耳朶や鎖骨を食み、滾る体を押しつける。

一時の夢でもいいと思った。気の迷いでもいい。

この人に愛されたい。

「好きです。わたしも、怜士さんが好きです。あなたのものになりたい……!」

感情を爆発させると、よりキスが深まった。

さっき着がえたばかりの服が性急に脱がされる。余裕の無さそうな感じが、またわたしの気持ちを高まらせた。

背中にぎゅっと手を回す。

「――――凛、凛……!」

何度も囁かれる名前に、切なさでどうにかなりそうだった。