四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!

「ご心配どうも。でも余計なお世話です。シュリのことは命を捧げてもいいくらい大切にしてるんで」

「星乃くんほどの人気者でも自分の女のことで挑発されたら熱くなっちゃうんだね?よかったね、三神さん。愛されてて」

「柳瀬先生」

四季くんがわざと私を隠すみたいに前に立って、
そうしながらも柳瀬先生との距離を詰めた。

「ん?なに?」

「シュリのこと俺の女、みたいな言い方しないでいただけます?俺はシュリを自分の所有物みたいに思ったことなんてないし、彼女の尊厳を尊重してるので」

「へぇ…立派なんだね」

柳瀬先生がひょいっと首を傾けて、
四季くんの背中に隠れる私を見た。

「三神さん」

「なんですか…」

「いや、三神さんって言うより、二人とも。夏休みだからってハメ外さないようにね?学園の生徒に″間違い″があっちゃいけないからね。じゃ、夏休み楽しんでー」

柳瀬先生は言いたい放題言って、妙に機嫌良さそうに去っていった。

「なんなの、あいつ急に。暑すぎて頭ヤラレてんじゃないの」

四季くんが悪態をついた。
こんな風に言う四季くんはすごく珍しいけれど、その気持ちはすごく分かる。

私だって不愉快だったし、
あんな風に絡まれる筋合いなんかない。

教師の言動とも思えないし。

「あのさ」

「うん?」

「あいつ、さっきシュリって呼んでたよね」

「…え?気づかなかった。私には四季くんが呼んだ声しか聞こえなかったし。四季くんも聞き間違いか、あの人が間違っただけじゃない?」

「…そっか。ま、いいや。帰ろうか」

「うん…」

柳瀬先生は間違いなく、私をシュリって呼んだ。
気持ち悪くて吐きそうだった。

早く…早く四季くんにいっぱい私の名前を呼んで欲しい。
早くあなたの声で上書きして…。