四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!

「包帯の上からなのにシュリの指先の温度を感じた気がした。あ、生きてるんだって思った。俺も、シュリも。シュリはね、こんなに全部がきれいなのに、ココだけいびつなんですねって言ったんだ。アートみたいで、素敵ですって」

「なにそれ。私、なに言ってんだろ」

「冷静に考えたら変なんだけどさ、真顔でそんなこと言うシュリがおかしくて。シュリがあのまま保健室を出ていってしまったら、またただの先輩と後輩に戻ってしまう。それがすごく嫌だった。どうしても、もう一度シュリの熱を感じたかった。そう思ったら咄嗟に“俺、君と付き合いたいな”とかキモいこと言ってた」

四季くんが恥ずかしそうに頭を掻いた。
その一言で、その先の私を救ったことに、四季くんは気づいてるかな。

「あのね、その辺のことは覚えてるよ」

「そうなの?」

「うん。四季くんが私の指に湿布を貼って、ガーゼを被せてくれた。そしたらほんとに痛みがやわらいだ気がして、星乃先輩は魔法使いなんですかって言ったの。そしたら四季くんがふにゃって可愛い顔で笑って。付き合いたいなって言ってくれたの…」

「俺も覚えてる。俺に魔法をかけてくれたのはシュリなのにな」

「もー。四季くんは、“俺のこと知らないかもしんないけど君のこと可愛がりたいなって思っちゃった。だから彼女になって”って…いきなりそんな風に言ってきて。なんてキザで女慣れしたひとなんだろうって思ってたよ」

「あーもうシュリいいよ、ハズすぎる。ってか真逆なのにね。フラれて死にそうになってた男なのに」

「あはは」

あの日、本当に痛みがやわらいだ気がしたのは、傷よりも心の痛みのほうだった。

四季くんの笑顔を見ていると心のトゲトゲが無くなって、まあるくなっていくような気持ちになれた。