四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!

「そんなに好きだったのになんで私に付き合おうって言ったの?」

「シュリの突き指を手当てしただろ?」

「うん」

「シュリが俺に、それはどうしたんですかって聞いてくれたの、覚えてる?」

「ごめん…覚えてないの」

ブレスレットも包帯のこともさっきまで忘れていた私だ。
四季くんと交わした会話さえはっきりと思い出せないくらい、そのときの私の頭の中はまだ、柳瀬でいっぱいだった。

「そっか。シュリはそう聞いてくれてさ。俺は咄嗟に“お腹が空きすぎて齧ったんだ”って答えた。シュリは“バカみたいですね”って真顔で言ったんだ」

「えっ…あの四季くんにそんなことっ!」

「どの四季くんだよ。それでさ、俺も“そうだね。バカみたいだよね”って笑ったら、“こんなにきれいなひとなのにもったいないですね。あー、でもこれはこれでいいのかも”って。心がどこにも無いみたいな冷たい表情で、指先で俺の包帯に触れたんだ」

あの日、四季くんは私の手当てをしてくれた。
所々の会話は思い出せるのに、
そんな風に会話をしたことは覚えていない。

でもきっと、少しずつ頭の中の柳瀬が消えていってたんだろうってことは分かった。