四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!

立ち上がって、四季くんの隣に移動した。

手を握る。
大きくてすべすべの手のひら。
指が長いから、自分の指を絡めたらすっぽり収まってしまう。

もし四季くんとことりさんが別れていなかったら、
あの日おんなじように保健室で遭遇していても、私達の恋は始まらなかった。

悲しくて、だけど今の幸せが奇跡みたいに思える。

「洗脳に近いんだけどさ、ずっとことりさんと居たから、すっかり彼女のことしか知らない俺になってたんだ。居なくなった瞬間に、どうしていいか分かんなくなった」

「私と同じ。大好きで、信じてたひとに裏切られるような私なら、なんの価値もないって思ってた」

「ん…。頭が真っ白になってなにも考えられなくなった。自分の中には最初からことりさんしか居なかったみたいな錯覚に陥ってさ。事情を知った海斗とか皐月が何を言ってくれても何も耳に入ってこなかった」

「四季くんと付き合い始めた日の日付…四季くんの誕生日の翌日だってずっと思ってた。そんなことがあったなんて…」

「俺はまだ未練たらしくブレスレットもつけたままでさ。ほんと、かっこわる…」

「あの日、四季くんはまだブレスレットをしてたから、話を聞きながらなんとなく、私と出会うまでに全然時間は経ってないのかなって思ってたよ。ちょっと日が経ってたら、皐月くんが無理矢理にでも取っちゃうかなって。前日だったとは思わなかったけどね」

「あはは。確かにな」

四季くんは私の目を見て、微笑んだけれど苦しそうな表情だった。

私はただ、手を握り続けることしかできなかった。

私がここに居るって。
四季くんはひとりぼっちなんかじゃないよって。