四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!

「自分の手のひらの上で何も知らない男を転がして、自分に対して従順にさせる。気持ちよかっただろうな」

「ことりさんだって本当に好きだったかもしれないでしょ?」

「それは無い。俺はことりさんにとって、ただのアクセサリーだった」

「そんな…」

「二年、付き合った。高二になって、あの六月。突然フラれたんだ」

「私と同じ時期…」

「うん。まったく同じときだな。俺のほうがほんのちょっと後くらいかな。俺はシュリと出会う前日…六月六日、誕生日にフラれた」

「…」

「しかも理由までシュリと一緒。結婚が決まったから別れようって」

「結婚…?」

「うん。愛人として囲っててもいいけど、面倒は避けたいから。あなたとのことはこれでおしまい。旦那に未成年と遊んでたことがバレると厄介だからって、あっさりとフラれた。そういえば…その頃にはだいぶ今の容姿になっててさ。出会った頃の面影もほとんど残ってなかったな」

「結婚…って…じゃあことりさんは既婚者なのに、また四季くんに近づいてきたの?」

「いや…実はさ…最近海斗から聞いてたんだよ。ことりさんが離婚したこと。だからちょっと気をつけたほうがいいかもなって」

四季くんが肩で息をついて、猫背気味に背中を丸めた。

なんだかすごく、疲れてしまったように見える。

「離婚したんだ…」

「元結婚相手はさ、まさに御曹司!って感じで。ことりさんのお父さん、会社経営してるんだけど、取引先の会社社長の息子って言ってたかな。フラれたときに嬉々としてご丁寧に写真まで見せられてさ。整った容姿に爽やかな笑顔まで貼り付けて。写真でも分かるくらいパリッとしたスーツすらも鼻についたな」

自嘲気味に口角だけを上げて笑った四季くん。

「嫉妬したの?」

「まぁ、そりゃあ…別れてたわけじゃないし、浮気じゃんって思ったよ」