「ってことでね、四季くんっ!数学教えて欲しいの」

放課後。

四季くんのおうちのリビング。
ふっかふかのソファに腰を沈めながら、
私は顔の前で両手を合わせた。

一部始終を説明した私に、四季くんは「うーん…」って渋い声を出した。

「だめ?」

「教えるのがだめなんじゃなくて。シュリ、ほんとにできるようになるかなぁ」

「ひどーい!っていうか、できるようには…ムリかもしんないけど、その場しのぎでもっ…!」

「はいはい。テストはいつ?」

「来週の月曜日」

「ちょうど一週間後か」

「うん」

「じゃあちょっとやってみよっか」

「ほんとにありがとう。恩に着ます!」

「はいはい」

私の頭を撫でた四季くんの手のひらが頬に触れて、耳の後ろをさわさわってした。

「四季くんっ!言ってるそばから!」

「んー?なに期待してんの?」

「そんなんじゃっ…」

ガチャって音がして、玄関のドアの開閉音がリビングまで聞こえてきた。

「あれ?」

「え?泥棒?」

「まさか」

四季くんのママは商社でバリバリのキャリアウーマン。
パパは大学教授をしている。

二人とも、今日は帰りが遅いって四季くんが言ってたのに。