僕の名前は【オーブリー】

 僕の名前の由来は【エルフの支配者】という、何とも神話に出てきそうな名前だが、正直女の子みたいな名前で少し困惑する。

 この世に生まれ、この名を与えられたのだから、この名で人生を全うするしかない。

 しかし神様は残酷で。
 僕は物心がついた頃から、母や父と離れて別の家庭で過ごす事が決まっていた。後から聞いた話しでは、これが僕の育成プログラムだったらしい。

 母が恋しくて何度も涙を流したが、僕と同じくらいのホストファミリーの女の子が「大丈夫だよ。」と、おぼつかない口調で僕の背中を擦ってくれた。「俺と遊ぼうぜ!」と、女の子の兄がコッソリと遊んでくれたのは良い思い出。本当は覚えなきゃいけないことが沢山あったのに。

 それから少しずつ大人になり、勉強やマナーの指導を受けていく。いわゆるエリート教育だ。
 僕の他にも同じく優秀な境遇の子が、産まれた時から将来を有望され、期待されて育成される。
 トイレや睡眠、食事の時間まで全てスケジュール通りに動かなければならない。

 母も同じ職種だったので、僕がこの職種につくことは誇りだろう。

 嫌だと思った事は何度もある。少しでもミスをしたら「お前のミス一つで人の命に関わるんだぞ!」と、身体が震える程激しく怒られるからだ。

 泣いても、落ち込んでも…
 僕には甘える相手なんて居ない。周りの同僚達もそれは同じで、優秀と呼ばれた僕らでも、本当は沢山甘えて抱き締められたかった。
 そんな感情は心の底にソッと閉じ込め、今日もまた、
 世界の医療従事者のトップクラスの一員になる為に、過酷のスケジュールを組んで勉強していく。