と来栖は、テーブルに運ばれてきたビールに口をつけひと呼吸置くと、「悩むくらいなら結婚しちゃえば、お前も楽だと思うけどね」と話す。

「そう……なのか?」

「てか、いっそのこと子供でも作っちゃえばいいんじゃね?」

 こ、こ、子供……!?

「子供さえ出来れば、お前はあの子と結婚する理由が出来るだろ? それも一つ方法だと思うけどね。今時、授かり婚なんて珍しくないし」

 確かに、そうかもしれないけど……。矢薙が俺との子を望んでるかなんて分からないのに、むやみなことは出来ないって……。

「いや、まあ、そうかもしれないけどさ……」

「結婚したら子供は作るんだろ? 遅かれ早かれ、子供作るなら早い方がいいんじゃね?」

 さすがに無責任だと思われてしまわないか、不安になる言葉だな……。

「お前は臆病者なんだから、きっかけを作ってやらないと、あの子が可哀想だろ」

「……あ、ああ」

 矢薙は、子供が欲しいと思ってくれてるのだろうか……。だとしたら、嬉しいなとは思う。
 きっと、矢薙の子は可愛いだろうし。

「お前のことをこんなに想ってくれる人、他にいると思うか?」

「……まあ、多分いないだろうな」

「だろ? いい加減、腹括れよ」

 そうか……。そうだよな、いい加減、返事しないとだよな。