白くてキメの細かい肌。
上品なうすいくちびる。
長い指、大きい手のひら。
色っぽく筋の浮いた…首。

「来るの、ちょっと遅かったよね?」

「そうですか?すごく急いんだんですけど」

「迎えに行かなかったことは申し訳ないけどさ、俺が呼び出してんのに待たせるなんて、悪い子にはお仕置きしてあげなくちゃね」

「先輩、なんだか今日は強引なんですね?それ、めちゃくちゃそそります」

「へぇ?こーいうの好きなんだ?」

「でも先輩…ちょっと待って…」

「焦らすつもり?」

「そんなんじゃなくて…ほんとにするんですか?」

「きみだって待てないくせに」

待ってって言ったのに先輩は止まらない。
すごく余裕が無さそうに見える。

自分の″欲望″を満たすためだけに、
私の肌をなぞり、「きれいだね」なんて囁く人。

「なにやってんだよ、マジで…」

ふいに聞こえてきた声。

開け放たれたままだったドア。
腕を組んで首を傾げて、その人は重なり合う私達を見ていた。

「は…?」

「もー、遅いですよ。ふたばさん」

ゆっくりと体を起き上がらせて、乱れた髪を直す私と、
冷めた目つきで溜め息をついているふたばさんを、交互に見て混乱している人。

羽田よつば。
ふたばさんの双子のお兄さんだ。

「兄さんがそこまでバカだとは思わなかった」

「バカではないでしょう?よつばさんが通う学校って、お互いライバル校じゃないですか」

「地頭がバカじゃなくてもこれじゃあね…」

呆れ顔のふたばさんに、よつばさんが指をさして大声でまくしたてた。

「なんとでも言えよ!どっちにしろお前達はもう終わりなんだよ!」

そう。私にも分かっている。
よつばさんの目的は、ふたばさんから純血種を取り上げることなんだって。

だからふたば先輩のふりをして、連絡してきたんだ。

ヒートを“消滅”させるために。