先輩の理性、疼かせてもいいですか?

「今日さ、俺んちで夕飯食べていってよ」

制服に着替えるのを手伝ってくれながら、なんでもないことみたいにサラッと言った先輩の目をジッと見た。

「はい?」

「ごめん、聞こえなかった?今日さ、」

「聞こえました。お夕飯ですよね?食べません!」

「おい」

「いやムリムリムリ!あの、噂にはお聞きしてますが羽田グループ様の全容をまったく理解していないと言いますか…そのような場所に足を踏み入れるなどと…!」

ぶんぶんと手を振って否定する私の両手首を先輩が掴んで「こら、暴れるな」って言った。

シャツの襟元をきちっと整えてくれてから、ふたば先輩はかすめるだけのキスをした。

「なに慌ててんだよ。フツーの家だから」

「普通なわけないじゃないですか!絶対トイレだけでうちのリビングくらいありますもん!」

「ンなわけないじゃん」

「ムリですって…作法とかも知らないのに…」

「必要ない。セナはいつも通りにしててくれればいいから。避け続けられないだろ?いずれはうちで暮らすんだから」

「…へ?」

「いや、そうだろ?…あー、ごめん。もしかして結婚相手はもっとちゃんと恋愛して、とか思ってた?」

「いや、いやいやいや違いますけど!」

「そ?じゃあ婚約者として紹介したいからさ。パーティーってわけじゃないんだし。両親しかいないからあんまり気負いしないで」

婚約者、って言ったよね?

聞き間違え?

ふたば先輩の顔を穴が開くほど見つめたけれど、
先輩は自分が言ったことをすでに忘れてしまったのか気にもしていない。

一体なにが起きているのか分からないまま、
先輩に連れられて下校した。

校門前には、いかにもお金持ちって感じの車が停まっていて、
それは当然、羽田グループの物で、
後部座席のドアを開けて、こっちに頭を下げている運転手さんが居る。

めまいがしてきた。

これは絶対に、先輩のフェロモンのせいなんかじゃない。