生きているうちに純血種と出逢える可能性は低いけれど、
一応、出逢えたときのために、私達は専門医から指導は受けている。

純血種と出逢ったヒートは、暴走を抑制剤で抑えることはできない。

方法はひとつだけ。
純血種のプラスの血液を経口摂取すること。

けれど経口摂取されたプラスは反対に性的欲求が増幅してしまう。

つまり、ヒートにとっては踏んだり蹴ったりってこと…。

あー…憧れの推しが純血種だなんて…。
そんなことも冷静に考えられないくらい、もう頭がクラクラして限界だった。

「セナ、はやく」

「え?」

「それ以上はムリだ。おかしくなっちゃうだろ」

ふたば先輩が自分の首筋をトンって指差して、私の後頭部をグッと引き寄せた。

「でもっ…」

「戸惑ってる場合じゃないだろ。これ以上暴走したら俺だってどうしていいか分かんないんだから」

ダメだ。
抗えない。
こんなの知らない…。

カプってふたば先輩の首筋に歯を突き立てた。

「ッ…」

痛みに小さく声を出した先輩は、
自分のほうがツライだろうになだめるみたいに私の頭を撫で続けてくれた。

「ハ…ァ…」

くちを離した私の頬に流れる涙をふたば先輩の指がすくった。

そのまま、苦しそうに呼吸を繰り返す先輩が、
やわらかいソファに私を押し倒した。