ゲホゲホとむせ返りながら、信じられない気持ちで野上君に目を向ける。
野上君は、まるで何もかもお見通しと言わんばかりの笑みを浮かべ、頬杖を突きながらこっちを見ていた。
「き、気づいてたの?い、いったいいつから?」
「最初からかな。永井、初めてうちに来てコーヒーを飲んだ時、眉間にシワを寄せていたからな。もしかして、苦いの苦手なのに無理して飲んでいるのかもって思って」
ま、まさか最初からバレバレだっただなんて。
それじゃあ今までずっと、『こいつブラック飲めますよーって態度とってるけど、本当は苦いの苦手なお子様舌なんだよな。それなのに無理して背伸びして、そう言う所、本当にガキだよなー』って思われてたってこと―⁉
ああ、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
カウンターテーブルに顔を埋めて、いっそ殺してって、心の中で呪詛を呟く。
「そのうち注文しなくなるだろうと思っていたのに、何度来ても懲りずにブラックを頼むもんだから。永井が言うまで俺からは言わないでおこうって思ってたけど、いつまで経っても飲めるふりを止めないものだから。先にこっちの限界が来ちまったよ」
「め、面目次第もございません」
「見栄を張るなとは言わないけどさ。無理して飲まなくてもいいからな。苦手なのに平気なフリして飲まれたんじゃ、こっちの気が滅入っちまうよ」
「ご、ごめんなさい~」
確かにそれは、凄く失礼な事かもしれない。
ミルクと砂糖を入れるだけで美味しく飲めるのだから、素直にそうしておくべきだった。
「ちなみに二回目以降は永井でも飲めるよう、少しだけどこっそり砂糖を入れておいたから。ミルクは入れたら色でわかるだろうから入れられなかったけど……飲みやすかったか?」
ええっ、そうだったの⁉
最近ブラックのコーヒーも飲めるようになってきたって思っていたけど、本当はブラックじゃなかったの⁉
ああ、穴があったら入りたいよ。
野上君、いったいどんな気持ちで、砂糖入りのコーヒーを出していたのだろう?
もしかしたら、『見栄っ張りなお子様舌の女め。いや、砂糖を入れてる事にも気づいていないなんて、お子様舌じゃなくてバカ舌なんじゃないの?そんな奴に家のコーヒーを淹れてやることは無いな。どうせこいつの事だから、泥水を飲ませても気づかないんじゃないか。よし、うちの店にこんなクレイジーな奴が来てるって、ネットに名指しでアップしてやろうか』なんて考えていたんじゃ⁉
「ほ、本当にごめんなさい。どうか、どうか泥水だけは。あと、ネットで名指しでさらし者にするのもご勘弁ください。そんな事をされたら私、大学で居場所がなくなってしまいます……」
「おい、いったい何の話をしているんだ? 心配しなくても、そんなことしないって」
わわっ、呆れた顔をさせちゃってる。
ううっ、恥ずかしさが更に上塗りされていくよ。
野上君は、まるで何もかもお見通しと言わんばかりの笑みを浮かべ、頬杖を突きながらこっちを見ていた。
「き、気づいてたの?い、いったいいつから?」
「最初からかな。永井、初めてうちに来てコーヒーを飲んだ時、眉間にシワを寄せていたからな。もしかして、苦いの苦手なのに無理して飲んでいるのかもって思って」
ま、まさか最初からバレバレだっただなんて。
それじゃあ今までずっと、『こいつブラック飲めますよーって態度とってるけど、本当は苦いの苦手なお子様舌なんだよな。それなのに無理して背伸びして、そう言う所、本当にガキだよなー』って思われてたってこと―⁉
ああ、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
カウンターテーブルに顔を埋めて、いっそ殺してって、心の中で呪詛を呟く。
「そのうち注文しなくなるだろうと思っていたのに、何度来ても懲りずにブラックを頼むもんだから。永井が言うまで俺からは言わないでおこうって思ってたけど、いつまで経っても飲めるふりを止めないものだから。先にこっちの限界が来ちまったよ」
「め、面目次第もございません」
「見栄を張るなとは言わないけどさ。無理して飲まなくてもいいからな。苦手なのに平気なフリして飲まれたんじゃ、こっちの気が滅入っちまうよ」
「ご、ごめんなさい~」
確かにそれは、凄く失礼な事かもしれない。
ミルクと砂糖を入れるだけで美味しく飲めるのだから、素直にそうしておくべきだった。
「ちなみに二回目以降は永井でも飲めるよう、少しだけどこっそり砂糖を入れておいたから。ミルクは入れたら色でわかるだろうから入れられなかったけど……飲みやすかったか?」
ええっ、そうだったの⁉
最近ブラックのコーヒーも飲めるようになってきたって思っていたけど、本当はブラックじゃなかったの⁉
ああ、穴があったら入りたいよ。
野上君、いったいどんな気持ちで、砂糖入りのコーヒーを出していたのだろう?
もしかしたら、『見栄っ張りなお子様舌の女め。いや、砂糖を入れてる事にも気づいていないなんて、お子様舌じゃなくてバカ舌なんじゃないの?そんな奴に家のコーヒーを淹れてやることは無いな。どうせこいつの事だから、泥水を飲ませても気づかないんじゃないか。よし、うちの店にこんなクレイジーな奴が来てるって、ネットに名指しでアップしてやろうか』なんて考えていたんじゃ⁉
「ほ、本当にごめんなさい。どうか、どうか泥水だけは。あと、ネットで名指しでさらし者にするのもご勘弁ください。そんな事をされたら私、大学で居場所がなくなってしまいます……」
「おい、いったい何の話をしているんだ? 心配しなくても、そんなことしないって」
わわっ、呆れた顔をさせちゃってる。
ううっ、恥ずかしさが更に上塗りされていくよ。



