恥ずかしいけど,口調さえはいつもの私のものだった。

なのに,口からでたのは正反対の言葉。



(ち,ちが)
「夜恵」


様子を見に来ただけで,上がって貰う理由なんてない。

だから,えっと,えっと。



(やっぱり何でもない!)
「立ってないで入ってよ。そこだと疲れるでしょ」



違うってば~ー!!!!!

もう。

悔しい。

悔しいけど,これ以上は仕方ない。

どういうわけか2度も私以外の言葉を使ってしまったんだから,とりあえず上がって貰わないといけない。



「えっと……じゃあお邪魔します」



靴を律儀に揃える幼馴染みの姿を見て,きゅんきゅんしちゃったりする。



「(襟足可愛い……髪ふわふわ……かっこいいすき)」

瞬間,ぴしりと空間に亀裂が走った。

あぅ,え,あ



「(え?!)」「え?」



よく分からないけど,死んだ。