全部口から出ていく(たすけて泣)。

「霧香。なら,彼氏ならお願い聞いてくれる?」

「お願い?」



彼氏って言われてどきどきする私も大概だけど。

もうバレないとおもうと安心する。

だから,油断した。

夜恵は私を上回る。



「霧香じゃなくて,きりちゃんって呼んでいい? 周りがうるさいから合わせて,我慢してたんだよ? 前はそうだったし,特別感あっていいと思わない?」

「思わないけど,いいよ」

「きりちゃん,きりちゃん」

「なに」

「ふふ……すき」


ずるい,なにこの生き物。

打算的で,あざとくて。

かわいい。



「ほんとは泣き虫なのにいつも頑張ってるとこも,結局俺の前だと泣いちゃうとこも。好きだよ。だからきりちゃんもちゃんと甘えてね。涙でぐちょぐちょになっても好きだから」



簡単に私をつかまえて,抱き締める。

世の中の恋人って,ほんとにこれであってるのかな。

だとしたらすごい。

たえられない。



『……夜恵,すき』



自由になった私の言葉。

小さくギリギリの音量で伝えたそれは,嘘か,ほんとか。

そんな,エイプリルフールのお話。