全部口から出ていく(たすけて泣)。

「で,なんでそうなっちゃったの?」



あ,ひどい。

今思い出したみたいに,なんならついでみたいに。



「(分からない)」

「あ,ねぇあれじゃない? それっぽいのあるけど」



夜恵が指を指したのは,少し大きめの古びた本。

友達に押し付けられた,確か



「(恋が叶うおまじないの本……?)」

「うわうさんくさ」



言っちゃだめだよ。

でもだから私は断ったのに



「(でもそれ,私読んでない)」

「でもまあ1番怪しい以上見てみようよ」



よいしょと腰をあげて,夜恵はその本を見に行く。

私はベッドから動かず,瞬きひとつせずにその様子を見つめた。

私,ホラー無理。

恋のおまじないなんて,そんな可愛いものには見えなくなっていた。



「あれ,これ全部白紙……ちがう,1頁だけ文字がある」

「(なにそれこわ)」(あ,ううん)「めっちゃ怖い」



大変すぎる。

もういや情けない。



「卯跳ねし月の前の晩。想う相手と繋がるもの胸に抱いて祈れ。さすればイタズラ好きの卯が微笑まん」

「なんて?」

「そう書いてあるんだよ。やった?」



……?



(やってない!)
「やった,かも」

「目,泳ぎまくってる。今嘘つこうとしたでしょ」