あぁ、もう。

何も言ってないのに、ふられちゃったな。


ふふ、笑えちゃうや。


大げさなくらい肩を落として、教室から遠くへ遠くへと、逃げていった、そんな記憶がある。




それから私はたぶん、15分くらい経ってから、教室に入った。
流れる雫を全て止めてから。


何ひとつ変わっていない、そんな顔を装って。


「愁夜、帰ろ」

「あぁ」



二人、並んで帰るのは、いつものことなのに。

あの日は、並ぶのが、怖くなった。

緊張した面持ちをした愁夜が、目の前に立った時にはもう、心が崩れそうになった。



「なぁ、ゆう」

…あぁ、いやだな、聞きたくない。


「ん?どうしたの」

笑った、気がする。
私もよくわかんない。

ふんわりとしてて、覚えていないから。



「俺…ゆうが、好きなんだ。ずっと言えなかったけど、ずっと。好きなんだ」

ふふっ、愁夜は演技がうまいなぁ。

呑気にそう思ってしまったことは、なぜかはっきりと覚えていた。


「俺、前から、ずっと、好きで」

…。

「根は優しいとこも、全力でがんばるとこも」

嘘だ。

「よわっちぃのに、強がるとこも」

嘘つきだ。

「頭がめっちゃいいとこも、っ、かわいいとこも」

もう、やめて。

「言葉で言い表せないほど、もう、好きなんだ」

やめて…。

「よかったら、つきあっt」

「やめてっ!!!」

思わないようにしてたこと全部、溢れてしまう。


なんで、愁夜はそんなこと言うの?

いつからウソ告するような、そんな人になって、しまったの、?

私を守ってくれる、そんな愁夜は、どこに行っちゃったの、?