「うはー、長風呂になってしまった」
夢中になって体を洗っていれば、お風呂から出た頃には時間ギリギリ。
急いで制服を着て、菓子パンをひとつ口に
詰め込む。
髪をくしで整える際、やはりまばらに散らばる首筋の痕が目に入ってしまった。
「だめだ…第1ボタン閉めても隠しきれない」
普段ボタンなんて全部閉めないから
ちょっと息苦しい。
髪をくくるのをやめて下ろしてみても、数個の赤はまだしっかりと見えてしまう。
こうなったら時間ないけどコンシーラーで誤魔化すしかない。
最後の抵抗だ。
「まったくもう。こんなキスマークの量
どこぞのラブラブカップルでもつけないって」
一個一個、バレないように丁寧に
消していく。
だけど、一つだけ、どんなに重ね塗りしても消えてくれない濃くて大きな痕が残った。
「…しかたない」
最終奥義、絆創膏。
きっと仁奈にはバレてしまうだろうけど、
モロ出しよりはマシだ。



