目をつぶると、まぶたの裏に新山くんの顔が浮かんでくる。
連絡先のこと、あとで謝らないと。
許してくれるかな。
嫌われちゃうかな。
今後…もしも秋道さんの狂気の矛先が新山くんにまで向けられたらどうしよう。
傷つけたくない、傷ついてほしくない。
私のせいで迷惑をかけたくない。
新山くんへの想いは諦めなきゃいけないのかな。
大好きなのに…
「ばか。秋道さんのばーか」
こらえきれなくて、涙がぼろぼろこぼれてしまう。
負けるな怯むな平石茜。
あの変態テンパゆるゆるおじさんの思い通りになんてなるものか。
毛布をぎゅっと握りしめ、思考を遮断した。
やがてまどろんできた頭の中に、やさしい唄がきこえてくる。
いまこの世で最も憎い、大好きなシンガーソングライターの唄。
私だけに綴られた愛であった。



