「俺すごく悲しかったよ。こんなに愛してるのに、どうしたって茜ちゃんは新山くんを選ぶ」
「……」
「俺だと拒絶されることが、新山くんなら許される」
「……」
「甘い言葉も、キスも、セックスも」
「……」
「新山くんなら、許される」
「……」
「やだなぁ、羨ましいなぁ」
「……」
「どーしたら、茜ちゃんは俺だけのものになるのかな」
「…っぃ」
ぬるりと滑りこんだ指が、私の手の甲に爪を立てた。
「好き、好きだよ茜ちゃん」
「……」
「きみしかいらない。ほしくない」
「……」
「平石 茜のすべてが欲しい」
「秋道、さ……」
「新山くんになんてあげたくない」
「…いっ」
「新山くんなんかいなくなればいーのに」
「いたい、秋道さん」
「新山くんなんか死ねばいーのに」
「やめ、て…」
「新山くんなんか」
「秋道さんっ」
「消えればいい」
ブツッと爪が皮膚を貫く。
白い泡に、紅が混ざった。



