「どうして…それを」
「ここ最近ずっとグラウンドで練習してるよね。肩なんか組んで、半身をピッタリと密着させてさ。茜ちゃん、ずいぶん嬉しそーな顔してた」
まるでずっと前から知っていたような口調。
秋道さんは手を止めないまま話し続ける。
「茜ちゃんと全然会えなくて、寂しくて死にそーでさ。気分転換に毎日高校まで見に行ってたんだ。それで偶然装って会えたらいいなーくらいに思ってたら、楽しそうにくっつき合うふたりを見つけてね」
「……」
「嫉妬で死ぬかと思ったよ。触られることになんの抵抗もしていないきみと、茜ちゃんを愛おしそうに見つめる新山くん。あぁ…思い出すだけで虫唾が走る」
震えのこもった低い声が、ひたすらに鼓膜を揺さぶる。
怖い…。
私の手を執拗に洗う秋道さんが、なんだか知らない人みたいだった。
「俺、茜ちゃんの担任の先生と仲良しだからさ。すぐに校内に入れてもらえたの」
「……っ」
いつのまに担任をまでも掌握したのか。
あんなに堂々と校内に侵入しても、誰一人として気にしなかったのはそういうことか。



