「……来て、茜ちゃん」
手を取られ、そのまま奥へと導かれる。
入った部屋には洗面台があり、大きな三面鏡が私たちを迎え入れた。
秋道さんは私を洗面台の前に立たせると、その背後から手を伸ばして勢いよく水を出す。
「手、洗おーか」
「え?手ですか」
「うん。おれが手伝ってあげる」
後ろから抱きしめるように腕がまわされて、秋道さんの手が私の手を優しく擦る。
甘い香りを放つ石鹸がお互いの肌の摩擦で泡立ち、長い指によって丁寧に隅々まで洗われていく。
次第にねっとりとしたどこか艶めかしい手つきになってきて、ただ手を洗っているだけなのに、おかしな気分になりそうだった。
「あ、秋道さん、もうそろそろ…」
「まだだめだよ。もっと綺麗にしないと新山くんの汚れが残っちゃう」
「え…」
「二人三脚。練習たのしそーだったね。
体育祭で一緒に出るのかな?」
耳元でささやかれた言葉にドキリとした。



