病んだ心をつまびいて



「秋道さん!ちょっと!」

「んー?」


秋道さんは私の首筋に顔をうずめながらくぐもった声をだす。


ぴったりくっついて離れようとしない、飼い主に再会した大型犬さながらだ。



「なんでここにいるんですか!てか何しに来たんですか!」


「質問パラダイスだなぁ。待ち焦がれた再会なんだからもっと余韻を味あわせてよ」



顔を上げた秋道さんは、ほんの一瞬新山くんの方を睨むと、すぐに表情をゆるめて私を見る。



「愛する茜ちゃんを迎えに来たに決まってんじゃん」



そう言うと、秋道さんは私の膝裏と背中に腕をまわし、軽々と抱え上げてしまった。


突然の浮遊感にわたしは「ひゃっ」と声が出る。



「秋、道さ」

「ほら帰ろーね。かわいいかわいい俺の茜ちゃん」



おでこにチュとキスをされ、抗う間もなくそのまま視界はグラウンドの外へ転換される。



「おい、待てよ」



そのとき、背後から新山くんの鋭い声が飛んできた。