病んだ心をつまびいて




「えっ、ひゃぁぁ!」



よーーーく知ってる優しい匂い。
骨ばった白肌の手。
もふもふとしたくすぐったいくせ毛。

ゆるくて低い──声。



私の全細胞が言った。

うわ、出た

と。




「あ、あ、秋道さん?!
どうしてここに?!」



意味わからん!ここ学校だけど?!



急いで振り返れば、綺麗な顔面がドアップ。


幻覚じゃない、そうであってほしいけど紛うことなき秋道さんだ。



隣に座る新山くんは唖然としている。
彼にあんな表情させられるの多分この世で秋道さんくらいしかいないんじゃなかろうか。




「茜ちゃんがそんなに取り乱してるなんて珍しーね。ちょーかわいい」


「いや、かわいいじゃなくて。何しに来たんですか!」


「うはぁ、ひっさしぶりの茜ちゃんの匂いだ。汗混じりの柔軟剤さいこー。新しいの買ってあげるからこのジャージ俺にちょーだい」


「話を聞いてください!」




ぜんっぜん会話が成り立たない。
久方ぶりの秋道節にペースが呑まれそうだ。


懐かしんでた自分が馬鹿らしいし、見事なフラグ回収を決めてしまった。