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「ぬふ…うふ」
「よかったね茜。あの新山とさらにお近づきになれたよーで」
その後、教室へと戻った私はあの屋上での時間の余韻に浸りすぎてまったくお弁当に手がつけられなかった。
仁奈は気持ち悪いほど口がゆるんだ私を冷めた目で見ている。
「はぁ…新山くんが、新山くんが…」
「もう両想いじゃん。アキミチさん泣くんじゃない?」
「分かってないね仁奈チャンよ。あの人が泣くで済むわけない。包丁片手に学校襲撃してくるよ。こわいなー」
「いやなんなんその余裕」
あぁ嬉しいなぁ。そんで楽しみ。
これから新山くんとマンツーマンで二人三脚の練習ができるなんて。
こんなに体育祭に感謝したことないよ。
「てかさー、新山ってマジのマジで本格的にあんたのこと好きだよね」
「え?そこまで?」
「だってその二人三脚、有志じゃん?別にエントリーしなくてもいいのに、わざわざ茜誘って出ようなんて。マジじゃん」
「ん、んん?二人三脚って有志なの?強制じゃなくて?」
「おいこら体育祭実行委員把握しとけ」
仁奈の言葉に固まってしまう。
うそ…そんなん、ほんとうにマジのマジで……
──『俺のものになる?』
う、わわわ……っ
「茜顔ちょー真っ赤」
「ちょっとお黙り親友!」
あまりに甘すぎた濃密な時間。
その日、夜寝る寸前ギリギリまで体の火照りが冷めなかった。



