「そろそろ戻るか。付き合わせて悪かった」
「ううん気にしないで。むしろ逆に相談乗らせちゃってごめんね。ありがとう」
お互い自然と笑い合い、穏やかな秋の風が吹き抜ける。
「じゃ行こっか」
新山くんより先に足を踏み出せば
「平石」
改まったように私を呼ぶ声に振り返る。
「体育祭の男女混合二人三脚、一緒に出場しねぇ?」
「え」
新山くんが、一歩近づいてくる。
「俺らの知らないところで、他の実行委員のやつらが、そんなふざけた種目を勝手に作りやがったんだけどよ。お前となら出てもいいかなって思ったんだ」
「新山くん…」
「エントリーすれば、練習とかで一緒にいられる時間も増える」
「……」
「お前のこと、いくらでも独占していいんだろ?」
「うん…」
「なら、俺と出て。二人三脚」
スッと手を差し出される。
大きくて、ゴツゴツした手。
新山くんが私の時間を欲しいと言ってくれている…
憧れの大好きな人と一緒にいられる。
そんなの、断る理由なんて──
「よ、よろしくお願いします!」
その手をがっしりと握りしめた。
新山くんは一瞬目を見開いて、それから
「おう」と嬉しそうにはにかんだ。



