流れる、しばしの沈黙。


言葉に詰まったのは、新山くんの表情がなぜか冗談に思えなかったから。


どう反応していいか分からなくなる。


秋道さんだったらすぐにあしらえるのに。
新山くん相手じゃ何もかもを本気にしてしまう。


私…一体なんて返せば──




「冗談だよ」



ようやく降ってきたのは、そんな言葉だった。

新山くんを見れば、薄くだけど笑っていて。



「ほんと、お前ってなんでも信じるんだな。変な男に騙されないか心配になるよ」

「え、あ、」



な、なんだ。冗談か。そうだよね。



「もう、びっくりさせないでよ。じっくり考えちゃったじゃん。冗談に決まってるよね、はは…」



うわ、はっずかし。
私マジになってたよ。
新山くんが"俺のもの~"だなんて本気で言うわけないじゃん。


手でパタパタと顔をあおぐ。



「やだよな、やっぱ。俺の彼女なんて」



ボソッと新山くんが何かをつぶやいた。




「え、なに?」



あまりに小さな声だったから、おもわず聞き返してしまう。


新山くんはそんな私を一瞥だけすると
「なんでもねぇよ」とそっぽを向いてしまった。



なんだろう。まさか勝手に勘違いしてドン引きさせちゃったかな?
うわぁ、今日の私、全体的に墓穴掘りまくってる…