「うれしかったのに。平石が声かけてくれて。ようやく通話できたと思ったらその一回きりだろ?俺、なんか変なこと言っちまったのかとか、すげぇ不安になった」


「そんなこと…っ」


「じゃあどうして連絡先消したんだよ。納得いく答えくれるまで逃がさねぇから」




えっ、あ、逃がさない?!

ごめんなさいほんとうにごめんなさい
答えたくないとか思っちゃってごめんなさい

答えなければ新山くんとずっとここにいられるとか考えちゃってごめんない

ていうか新山くん近いかっこいい



頭の中でうずまく最低極まりない煩悩を焼き払い、新山くんとしっかり目を合わせる。




「……平石」

「新山くん、あのね」


「俺のこと、そんなに嫌いか?」




しゅん
切なげに眉を下げた新山くんに様々な方向から打撃を食らった。




「き、嫌いなわけない!!!」




食い気味な声が空に響く。


女は度胸だ平石 茜。
ここでいかなくてどうする!好きな人を泣かせるな!(泣いてない)




「わ、私だって嬉しかったよっ。新山くんに話しかけるのは心臓壊れるくらい緊張したけど、新山くん優しいから通話までしてくれて、すごく幸せで。時間あっというまだったし。ほんとに、私、新山くんが思う何倍も新山のこと大好きだよ!私の時間ならいくらでもあげます!いくらでもっ……あ」



熱くなってハッとする。
口走りすぎた言葉はもう戻ってはこなかった。



私…なんて言った?


我に返り、沸騰したように顔が熱くなった。




「あ、えーと…」




羞恥にうつむくことしかできずにいれば、頭上から小さく吹き出すような音がして。


視線を持ち上げると、そこにはおかしそうに目を細める新山くんの顔があった。