「茜ー、購買行ってくるから先食べてて」

「はいよー」



昼休み
お弁当を忘れたのであろう仁奈を見送り、私は烏龍茶を一口飲んだ。




「平石」

「んぐっ」




突如、横から低い声に呼ばれて

それが明らかに新山くんのものだと脳が秒速で理解したもんだから吹き出しそうになってしまった。




「に、にに、新山くん、どうしたの???」




みっともなくどもる私。

それを、いつ見てもばりばりカッコイイ新山くんが見下ろしていた。




「今、時間いいか?ちょっと話したいんだけど」




こ、これはお誘い?!(ちがう)


胸の鼓動が急激に速度を上がる。
万力の握力で烏龍茶のパックを握り潰してしまう前に机へと置いた。




「うん、全然大丈夫」

「そうか。んじゃ少し付き合って」

「あっ」




新山くんは流れるような動作で私の手を掴むと、そのまま教室から私を連れ出したのだった。



大きな背中のうしろで慌てて仁奈へメッセージを打つと


『その調子で抱かれてこい』


なんて下世話な返信が来たせいで、ムダなドキドキがプラスされてしまった。ゆるさない。