節の浮いた指先が、音を紡ぎはじめる。
なめらかなコードに秋道さんのゆるい歌声が絡まっていく。
新曲、なんてタイトルなんだろう。
きけばよかった。けど、これは恋の歌だ。
秋道さんは新曲ができると、必ずいちばんに私に聴かせてくれる。
弦に指を掛ける際、静かに伏せられるまぶた。
歌い出しのほんのり掠れる息。
糸を自由自在に操る指先。
そして…低くて優しい声音。
はじめて聴かせてもらったその時から
私はこの人の歌声に心をわしづかまれてしまっているのだ。
普段はゆるくて寝てばかりで変態でも
この"表現者"となった瞬間だけは、きっと新山くんと並ぶくらいかっこいい。
どんなにやばい人だろうと、ひとつ掴まれてしまったものがあれば、なかなか離れられないのだ。
くやしいけど。



