学校帰り、私が住む部屋の玄関ドアの前にカップ酒の空瓶が4本転がっていた。



犯人なんてすぐわかる。

またあやつ、秋道さんだ。



私が学校へ行っているあいだに、ここで酒を飲んでいやがったようだ。

…きっと、私のことなんか考えながら。



「もう…」



よっこらしょと4本瓶まとめて拾い上げる。




困ったことに、秋道さんは待ち伏せの他にこーゆーことをしてくるのだ。



なんでも

『ここで茜ちゃんのこと考えながら飲む酒がいちばんうまい。ご飯食べたときに聞こえる嚥下音とか、服と肌が触れ合った衣擦れの音とか。茜ちゃんのちょっとした生活音がこのドアの中に全部詰まってるんだよなーって考えると死ぬほど興奮するの』


……らしい。



長々と語られたはいいけど

あいかわらず選ぶワード一つ一つが気持ち悪くてほとんど入ってこなかった思い出。


ていうか他人の家のドアの前で酒飲んでる姿なんて、傍から見ればただの変質者だ。




「よし、どーせ寝てるだろうから、ぬくぬくした布団の中にこいつらぶちこんでやる」




胸に抱いた酒瓶がカランと音を立てた。