言われたとおり差し出すと
「え……、ちょっ」
ふんわりと、私に──包丁の柄を握らせた。
なにをする気なのか。
問いかける間もなく、上から、新山くんのてのひらに包まれて
導くように、その切っ先を
新山くん自身の手の甲に突き刺したのだった。
「っ……!!!」
悲鳴すらあげられなかった。
私とおなじ、左手の甲。
柄に伝わる振動から、皮膚と肉の裂ける感触が伝わってきた。
沈む刃先が骨にゴツンと当たる。
自らの手で細胞をひとつひとつ潰しながら丁寧に殺しているのだと、過敏になった神経がすべてを受け取ってしまう。
「いや……いやっ」
新山くんは離してくれない。
震える私の手をぎゅうと握りしめ、この猟奇の共有を強制してくる。
しかしさっきのような理性の消えた目をしているわけでもなく、恐ろしいほど冷静に目の前の光景を見つめている。
なんで、なんでこんなこと
しばらくしてからゆっくりと抜き取り、新山くんは慣れた手つきで患部にガーゼをあてがった。
そのガーゼも一瞬で真っ赤に染まり、私の背中には冷たい汗が流れる。
「な、なにしてるの!はやく!病院……!」
「行かねぇよ」
「はぁ?!ばか!新山くんのおばか!!」
「俺がばかなら、おまえは大バカだな」



