「ああ、話が長くなっちゃったね。それで、どんなご用かな?愛の告白ならいつでも……」
「部屋に入れてください」
「え」
一歩踏み出し、目元に力を入れて睨み据えた。
「せ、茜ちゃ……ちかいよ」
私からのアプローチにめっぽう弱いこの男。
あっというまに顔を赤くしてしまう。
大きなガーゼの下からでもわかる美形。
その傷をさらに深くしてしまいたい衝動にかられた。
でも私はそんなことしない。
秋道さんとはちがうから。
「おじゃましますね」
「あっ、まってよ、部屋汚いから」
「いつものことでしょう。片付けてさしあげます」
おかまいなくあがりこんだ。
まとわりついてくるやさしい匂いを振り払うように、大股で進む。
秋道さんの部屋に入れば、楽譜やら楽器やらが散乱していて、ため息がこぼれてしまう。
「茜ちゃんてば、まってよ」
あわてて追いかけてくる彼を無視して、テキパキと整理整頓を開始していく。
「まったく、収納棚の用途知ってます?こんなにギタースタンドがあるというのに、一本も立てかけられてないし。付喪神さんがいたら泣いてますね」
「うぅ……ごめんなちゃい」
「ごはんはちゃんと食べてるんですか?キッチン、使われてる様子がありませんけど」
「たべるの、あんま好きじゃなくて」
「生命維持に好き嫌い挟んでる場合ではないでしょう」
自己管理が破綻してるどうしようもない人に小言をぶつけつつ、何度もお邪魔しては綺麗にしてあげている部屋の掃除など容易いものだった。
あっというまに楽器は立ち並び、書類やゴミも分別。
私、才能あるのかも。
「さて、片付けは終わりました。なにか食べるものでも作りましょーか?」
「え、あ、うん」
「ハンバーグでいいですね?」
「は、ハンバーグがいいです」
終始頬をピンクに染めている秋道さんは、私のうしろをトコトコとついてくる。
大型のピクミンみたい。



