.
インターホンを押せば、秋道さんはすぐに出てきた。
「茜ちゃん、どしたの」
数日ぶりに見る秋道さんの姿を見て、ギョッとする、
「こんにちは。あの……なんかすごいですね」
もじゃふわな前髪からのぞくおでこには青痣。
形の良いまぶたとくちびるは切れた跡があり、いちばん派手なのは仰々しく鼻のど真ん中に貼られたガーゼだった。
私の視線の揺らぎに気づいたのか、秋道さんは鼻先をさすってゆるく笑う。
「そんなにビビんなくていーよ。新山クンにやられたやつの名残だから、へーき」
「いや、でも」
秋道さんが包丁片手に殺しにきた日。
私を守るために、新山くんは冷酷なまでの鉄槌を秋道さんに下したのだけど……。
フラッシュバックする。
綺麗な顔面が床に叩きつけられるあの瞬間。
生々しい打撃音。滝のような鼻血。
凄惨な光景はいつまでも頭にこびりついていて、軽くトラウマ。
「じつはさ、新山クンにボコボコにされたあと、そのまま病院に連れていってくれたんだよね」
「え、新山くんが、ですか?」
私の知らない彼らのその後。
恋敵を結局は助けてしまう彼の優しさと、出来上がってしまったマッチポンプにわずかな狂気をおぼえた。



