「俺はな、平石。おまえのことを見つけたあの日から……ずっと、おかしくなってるんだ」
やさしく、やさしく、語りかけられる。
「ゆっくり染めていくつもりだったのになぁ……。ほんと、どっかの誰かさんのせいで我慢なんかするヒマなくなった」
「んぐ……はっ、あっ」
「俺のことが好きなら、約束して、平石」
ようやく、その手を放してもらえた。
酸素の奔流に咳き込み、体がくの字に落ちる。
羽を拾うように抱きとめられた。
鼻腔に香る、新山くんのオレンジのにおい。
分厚い筋肉に包まれて、視界に広がる白いシャツが私を閉じ込める壁に見えた。
すると、耳もとに、新山くんのくちびるが寄せられる。
「俺が死んだら、平石も死んでくれ」
執着なんかじゃ片付けられない、命の結合。
大好きな人から向けられる、心の底からの渇望に、得体のしれない震えがこみあげた。
必死に顔を持ち上げ、新山くんと目を見交わせる。
「いま、俺に殺されたくなかったら、うなずいて」
殺されたく、ない
なにより
私の命で……新山くんの手を汚したくない。
こく、と
かすかな縦の動きすら、1ミリたりとも見逃さない新山くんは、うれしそうにほほえんで
「片方の命が尽きたら、もう片方も同じように命を絶つ。2人で1つ」
怖いほどやわらかく、私にくちびるを重ねた。
「死ぬときも……俺たちは一緒だ」



