「なぁ平石。俺は、おまえを殺すかな……?」
1回2回、くちびるを寄せられる。
「大切にしたいのに、おまえがかわいすぎて殺しちまうかも……それでも、おまえは俺のこと好きでいてくれる?」
「はぁ、ヒュッ、ぁ゛……」
「おまえが俺以外を選んだとき、この手で平石を殺すことを許してくれる……?」
「に、やま、く……っ」
「俺と……地獄に落ちてくれる?」
こどもに聞かせるみたいに、ゆっくり穏やかに問われる。
ぜったいに、いや。
私は……新山くんが堕ちることを望んでいない。
誰よりも幸せになってほしいから。
勇気を振り絞って首を横に振れば
「……じゃあ……いまここで殺すから」
さらに深く、てのひらが食いこんできた。
痛みを伴う圧迫に、自分の喘ぎが掠れていくのを感じる。
「殺して……誰にも見られない場所へ連れて行くよ」
脳の奥がガンガンと響き、警告を出している。
命の危機だと叫んでいる。
「しにた、く、な……」
「なら素直にうなずけよ。どうしてまた拒絶するんだ?俺のこと好きじゃねーの?」
「す……き……」
「じゃあ行動で示してくれ。うなずいて、おまえの命をぜんぶ俺にくれよ」
新山くんは顔をかたむけ、のぞきこんできた。
真っ黒で光のない2つの目が私のことを映し込む。
私の視界を覆い尽くすみたいに。
「俺は平石に全部くれてやるのにな。この体も感情も。命も。おまえだけに使いたい」
私を追い詰めながら、なにもかもを捧げようとしてくる矛盾した愛。
重たくて、苦しくて
私の大好きな新山くんの姿がボロボロと崩れ落ちていく。
こんなふうに愛されるなんて……考えてもいなかった。



