「……どういうことなの?」
「それはこっちが聞きたいんだけど」
パシン!と1度目よりも強く頬を張られた。
交わった華凛の視線が、私のことを敵だと告げている。
「おかしくない?アンタ、"新山くんの連絡先は持ってない"とかほざいてた気がするんだけどなぁ?」
「それは……」
「茜の言ってること、なにひとつ信じられない」
「か、華凛っ」
「気安く呼ばないで、気持ち悪い。アンタみたいなウソつきで尻の軽い女、アタシが追い出してやるから」
華凛は私を鋭く一瞥すると、取り巻きたちと一緒に教室を去っていった。
力が抜けて、床にしゃがみこむ。
死亡宣告も同然だった。
うちの学年のヒエラルキーの一番上に君臨しているのはまぎれもなく華凛だ。
それはどんなに人間関係に関心がない生徒でも知っているであろう事実。
そんな人間を敵に回したら一体どうなるのかなんて考えなくてもわかる。
「……もう、最悪」
恋愛、学校生活。
秋道さんの狂気がアクセル全開となったことで、私の日常がみるみるうちに崩れ始めている。
こわい。
見据える未来に光なんて見えない。
どうしたらいいの……どうしたらよかったの……
ふらつく足で立ち上がり、ゴミ箱に紙束を捨てた。
教室に行きたくない。
けどそうも言っていられない。
昨日だって無断で学校を飛び出してしまったばかりだし。
遅刻や欠席は受験に大きく響いてくる。
今は重要な時期だ。
これ以上は穴を空けられない。
新山くんに訊きたいこと、疑問。
様々あるけど、とにかく地獄へと向かうしかない。
これまでにない拍動にさらされながら、私は教室から出た。



