「茜、アンタすごいね。そっかぁ〜。新山と動画の男……どっちもに言い寄られてんだぁ?」
華凛が首を伸ばして顔を近づけてくる。
茶色がかった大きな瞳には私の怯えた姿が映っていた。
本当に、なにもかもを見透かされてしまった。
「そりゃ言えないよねぇ、うしろめたいよねぇ。アタシが欲しくてたまらない男は、アンタのことが好きなんだから」
つかまれた襟。
首すじに強烈な視線を注がれる。
その瞳が映すのは
紅い、紅い、執着の痕。
「アンタは2人の男からの好意をなあなあにしたまま、キスマークなんていうマーキングだけは受け入れて、チヤホヤされてる状況を楽しんでるんでしょ?」
「ちがう……っ、そんなんじゃ…」
「黙れよアバズレ!!!」
頬を叩かれた。
ジンと痺れる皮膚に、華凛の抱く感情が伝わってくる。
「1年の頃からずっと好きなの……でも、どんなに話しかけても、そばに寄っても、新山はアタシのことを視界に入れてくれたことなんてなかった」
肩を震わせながら華凛が言う。
切実で、哀しげな瞳がゆらゆら揺れている。
「茜だったんだ……」
「か、華凛、あのね」
「新山がずっと見てたのって、アンタだったんだ!!!!」
高い声が響き渡った。
彼女の叫びに、口から出かけていた言葉が引っ込んでいく。
ずっと、見てた……?
きっとぽかんとしているであろう私の姿に華凛はくつくつと喉を鳴らした。
「あれ?気づかなかったの?新山、ずーっと誰かのこと見てたんだよ。興味なんてないからアタシは名前すら知らなかったけど、あいつは確実にひとりの人間を見つめ続けてた」
「なに、それ……」
「羨ましかったなぁ。アタシはろくに認識されてなかったのに。新山に見つめられている誰かさんは、一途に一途に想われてたんだもん。新山がどれだけ優しい目してたか、茜は知らないでしょ?」
部活一筋で恋愛なんて二の次だと思っていた新山くんの視線を一身に受け続けていた人物。
それが……私だというの?



