「……私は新山くんの恋人ではないよ。これはまぎれもない事実」
振り絞った声に、華凛は表情をいっさい変えず
ただ一言「証拠は?」と放った。
「物質的な証拠はないけど、気になるなら新山くんに直接訊いてみればいいよ。私は新山くんの連絡先すら持ってないから」
スマホを華凛に差し出した。
笑えてくる。
秋道さんによってもたらされた喪失が、回り回って救いになるかもしれないだなんて。
私のスマホの中身をしばらく確認したあと、華凛はなにも言わずに投げて返してきた。
腕を組み、舐めるように観察してくる。
「アンタが潔白だっていうなら、動画の男とはどーいう関係なの?」
「あのひとは……」
ふたたび言葉に詰まる。
華凛はどこまで踏み込んでくる気なんだろう。
どう説明したら納得してくれるのか。
たとえありのままを話しても
『イカれたアプローチをしてくる変態野郎です』だなんて言えば、余計な疑念を増やす可能性がある。
それに、事実を歪曲されて、あることないことさらなる噂を広げられるかもしれない。
「なに?言えないの?アンタさっきから挙動が怪しいんだよね。それってうしろめたいなにかがあるっていうコトでしょ?」
一歩近づいてくる華凛。
そのうしろから針のような視線を注いでくる取り巻きの女子たち。
うしろめたいというか、新山くんに想いを寄せている華凛には話しづらい内容ばかりで頭が痛くなる。
「はっきり答えて。あの男は茜の彼氏?」
「……ちがう」
首を横に振れば、片眉を持ち上げた華凛がおかしげに笑った。
「え?まじ意味わかんない。新山とそーゆー関係でもなければ、あの男とも真っ白なの?ならそのキスマは何?このあいだの新山との痴話喧嘩はなんだったの?」
華凛の疑問はもっともだ。
拡散された動画、キスマーク、新山くんの豹変。
すべてを掛け合わせてもなお、どこにも成立した恋愛が無いなんて傍から見れば意味不明だろう。
ちなみに私も絶賛頭を抱えている。



