瞬間、秋道さんが素早く体をひねり、新山くんのこめかみに肘打ちをした。
押さえられていた秋道さんの肩がボキッ!!と音を鳴らし、おかしな方向に曲がる。
まともに見てしまった私は悲鳴ともつかない声が漏れた。
不意打ちの攻撃によろけた新山くん。
そんな彼の隙をつき這い出た秋道さん。
「茜ちゃんだいじょーぶだよ、折れてないから。脱臼しただけ」
私を安心させているつもりなのか、秋道さんは起き上がる際に抜け目なく拾った包丁をヒラヒラさせながらにっこり笑みを向けてくる。
綺麗な顔は鼻から下がべったりと血にまみれていて恐ろしい様相だ。
一方の新山くんは、すぐに立ち上がり私を庇うように前に躍り出てくる。
あらためて2人が対峙した。
背中しか見えない新山くんがどんな表情をしているかはわからない。
「悪いけど新山くん、茜ちゃんはおれがもらうよ」
「……」
「ずっとずっと……誰よりも、茜ちゃんを愛してきたのはおれだから」
飽きるほど聞いた「愛してる」の言葉。
それでも、今このとき発されたものには、明確な圧がはらんでいた。



