「ぅっ、げほっ……ははっ、こんなことしていーの?茜ちゃん怯えてるよ?おれの茜ちゃんにあんな顔させてタダで済むと─」
「平石の名前を呼ぶな」
ドガッ!!グシャ!!
血が飛び散る。
そのたびに空気が冷え込んでいく。
顔色ひとつ変えずに秋道さんを追い詰める新山くんの姿は、ヒーローと言うにはあまりにも冷酷極まりないものだった。
やめて、もうやめて
声が出てくれない。
体が動いてくれない。
「……きみも……おれと同じさ」
容赦のない手が止まる。
秋道さんが、歯を真っ赤に染めて笑っていた。
「おれたちは、愛に囚われ……まわりが見えなくなってしまう愚か者だ」
「……」
「愛する人間を自分のものにするためならなんだってしてしまう。それこそ、罪だって犯すさ」
「……」
「そして茜ちゃんを手に入れようと躍起になっているうちに……おれたちの方が茜ちゃんのものになっている。がんじがらめで途方もないやるせなさを味わう。ばかだね……本当にばかで、それが幸せなんだ」



