「新山くん……」
ほとんど掠れた声で彼の名を呼ぶ。
新山くんはうつぶせに倒れた秋道さんに関節をきめると、そのまま身動きがとれない体勢に固定した。
私の足もとには行き場を失った包丁が転がっている。
秋道さんも体は大きい方だけど、柔道部エースに勝てるはずもなく屈伏させられてしまった。
パワーの差は歴然。
「うぅ〜いたい、茜ちゃんたすけて」
くぐもった棒読みで目だけをこちらに向けてくる秋道さん。
しかしその後頭部を上からわし掴んだ手が、彼の綺麗な顔を勢いよく床に叩きつけた。
「平石の名前を気安く呼ぶな」
冷え切った抑揚のないトーン。
新山くんはなんのためらいもなく何度も秋道さんの顔面を上下に打ちつける。
──ドカッ!!ドカッ!!
生々しい衝突音がこだまする。
茶色の床に赤が混じる。



