病んだ心をつまびいて



「ひっ、……んぅ!」


「静かにね。すこしでも喋ったら……わかるよね」




叫ぶ前に口をてのひらで塞がれる。



刃の側面で軽くトントンと触れられただけなのに、それは強烈な脅しの効果をもたらした。


この刃はいつでも簡単に私の命を奪うことができる。


秋道さんの気分次第で……私は死ぬ。



どういうつもりなの……?

こわい



恐怖で滲み出た涙が秋道さんの手の甲を伝った。



「茜ちゃんの涙だ……かわいい……おれの皮膚の上、流れてる……もったいない……乾く前に……」



形の良いくちびるが味わうように雫をねっとりと吸い取っていく。



「甘い……かわいい……あぁ……好き……好き……茜ちゃん……」



衝動を必死に抑え込んでいるような、歓喜に満ちた声。力んだ呼吸音。弓状に歪む瞳。


柄を持つ手が震えている。


あきらかに様子がおかしかった。 




「……カフェオレ」




ぽつり、こぼされた言葉。


そのたった一文に、ありえないほどの鳥肌が立つ。