全身の血の気が引く。
どうして……そんなものが
「……茜ちゃんに……会いたくなったんだ」
「あいかわらず急ですね。
もう慣れましたけど」
「へへ……いきなり来ても追い出したりしない茜ちゃん……ほんとやさしーよね」
「寛大な心がないと秋道さんの愛は受け止めきれませんから」
落ち着け、落ち着け
声を震わせないように。
普段通りに接して、やりすごして、帰ってもらえればきっと
「どうして男物の靴があるの?」
空気が変わった。
ハッとして下を見ると、目に飛び込んでくる青い運動靴。
そうだ、新山くんはまだ帰っていない。
まずい
「……茜ちゃん」
ひんやりとしたものが首の皮膚に触れた。
ゆっくり、ゆっくり、顔を元の位置に戻せば
「新山くんとの時間は楽しかった?」
視界いっぱいに秋道さんの白い相貌。
そして
包丁の刃が、首すじに当てられている。



