「はい!どちらさまで……」
目の前を影が覆った。
真っ黒なスーツに身を包んだ男の人
揺れるくせ毛、やさしい匂い
顔は伏せられているけどすぐに分かった。
「秋道さん……?」
呼べば、前髪の隙間から、とろんとした瞳が浮かぶ。
生気を感じない佇まい。
「どうしたんですか?
スーツなんて……珍しいですね」
「…………」
たずねてもなんの反応もなく、数秒
光を宿さぬ双眸が、ゆっくりゆっくり私のことをとらえた。
「…………茜ちゃん」
抑揚のない声音。
背中に嫌な汗が伝った。
えもいえない違和感。
秋道さんの雰囲気がいつもと違っていた。
「ごめんね……いきなり……。
人と会ってたんだけど……帰ってきちゃった」
覇気のない薄笑い。
2つの目がじっとりと視線を注いでくる。
なんだろう……胸の奥がざわざわする。



