「新山くん……ごめん。
私、新山くんの彼女にはなれない」
声が震えた。
心の何処かで、あーあって気分にもなった。
「……なんでだよ、お前、俺のこと好きじゃねぇの?」
新山くんから表情が抜け落ちた。
大好きな人を傷つけたのだと分かる。
「好きだよ……好きに決まってるよ」
「じゃあどうしてだよ……
なんの問題もないだろうが?」
「ごめん……でも付き合えない」
このまま新山くんと恋人になったら、きっとありえないほど幸せ。
けど、その幸せを真正面から打ち砕いてくる仄暗い存在が、すぐそこまで迫っている気がした。
「理由を言え、俺を納得させろ。
じゃねぇと無理やりにでも俺のものにする」
怒気のはらんだ声。
ギリギリと締めつけられる手首が痛い。
新山くん助けてよ
新山くんの彼女になりたいよ。
でも
地面から私の足を掴んで離さないナニカが、それを許してくれない。
「本当にごめん、今は言えない。すべて終わったら、また私からあらためて告白させてほしい」
「意味わかんねぇよ……なに隠してんだよ。
そんなんで納得できるわけねぇだろ!」
「ごめん……必ず説明するから。
手を離して新山くん」
「離さねぇ……!
勝手なことばかり言ってんじゃねぇよ!!!」
荒い声が響く。
当然だ。
彼からしたら、なにも知らない状態で想いを断ち切られたようなもの。
こんなに求められているのにもかかわらず、頭の中は秋道さんへの漠然とした恐怖がすべてを無にしていく。
もう助けを求めてしまおうか。
たとえ新山くんが傷つくことになっても、自分のことを優先していいのだろうか。
秋道さんの凶悪な愛が本気のものだと実感してから、なにをしても悪い方へ進むんじゃないかって、怖くてたまらなかった。



