「最悪です。
私……好きな人がいるのに……」
こぼした言葉にハッとした。
まずい!ここまで言うつもりはなかったのに。
「そっか、茜ちゃんには本命がいるのか」
本命
あらためて人に言われるとむず痒い。
すると、アズマさんの指が私の目じりに触れる。
「そんな彼は、キミの涙を乾かしてはくれなかったみたいだね」
真剣味を帯びた声。
笑みを潜めたアズマさんは、とっくに私の涙を見抜いていた。
「いや!それは!新山くんは私が一方的に好きなだけで…っ」
「新山くんっていうんだね。
お父さんに良い土産ができた」
あぁ、また余計な口を!
ペラペラと動く舌が恨めしかった。
アズマさんは人から話を引き出すのが上手いというか、どんなことでも話してしまいたくなるような雰囲気を持っている。
「忘れてください!後生ですから!」
「はは、いやだよ。茜ちゃんが好きになる人なんて、絶対に素敵な人だもん」
そうやって嫌味なく私のことも新山くんのことも褒めてしまう。
悔しいけどうれしい。



